Home » Audio & Visual » [2010GW特集] ISDB-T変調器の今

[2010GW特集] ISDB-T変調器の今

(2010.5.3)

地上アナログ放送終了まであと1年3ヶ月となった、2010年5月時点のISDB-T変調器の現状をまとめた。

変調器とは

ここでいう「変調器」とは、映像・音声信号を入力し、それをアンテナ線に流れるRF信号に変換(変調)する機器のことを言う。ここでは特に、日本の地上デジタル放送規格である「ISDB-T」(Integrated Service Digital Broadcasting – Terrestrial)に準拠したRF信号に変調することができるものをISDB-T変調器と呼ぶ。

地上アナログ放送(NTSC)に準拠した変調器は、すでに一般家庭向けにも販売されており、例えばマスプロ電工の「VMD3M」などがある。

一方、ISDB-T変調器は現時点では業務用(受信機開発者向け信号発生器、施設運営者向け構内放送装置など)のものしかなく、価格も数十万円~数百万円である。

本稿では現時点で販売されているISDB-T変調器のうち、単体で映像・音声信号を入力し、RF信号を出力できるものを挙げる。

メディアグローバルリンクス ISDB-T 自主放送装置 MD2800

404 Not Found

MD2800は、施設運営者向けの自主放送装置である。アナログの自主放送装置の置き換えを狙った製品であるため、アナログコンポジット映像入力とアナログステレオ音声入力があるほか、SDI/HD-SDI、DVI信号を入力することもできる。

アストロデザイン エンコーダ内蔵 OFDM変調器 CT-5900

301 Moved Permanently

CT-5900は、コンポジット映像・コンポーネント映像・アナログステレオ音声・SDI・HD-SDI・DVB-ASI入力を持つ。

HIROTECH MPEG2-HDエンコーダ+PSI+MUX+OFDM変調器 DBS6050 型

301 Moved Permanently

DBS6050は、姉妹機のDBS5050を小型化したもので、コンポジット映像・コンポーネント映像・アナログステレオ音声・HD-SDI・DVB-ASI入力を持つ。DBS5050がPCベースであるのに対して、DBS6050は組み込みLinuxベースの製品である。

ミッキー・インダストリー 館内放送用デジタル変調器 MI-SD3000

http://www.mickey-industry.co.jp/seihin_joho_mi-sd3000l.html

MI-SD3000は、ホテル向けの構内放送装置である。この製品の大きな特徴はアナログコンポジット映像とアナログステレオ音声の入力を3系統持ち、単体でマルチ編成が行えることである。通常、マルチ編成を行う場合はエンコーダを3基用意し、そのTS(Transport Stream)出力をTS多重化装置で多重化してからOFDM変調器でISDB-TのRF信号に変調することになるが、本機はこれを単体で行えることになる。逆に本機はSD(標準画質)の送出しか行えず、HD映像の送出は行えない。

家庭向けISDB-T変調器は登場するか

ここまで紹介してきた各製品は基本的にシステム製品であり、「価格・納期は別途お見積もり」の世界である。しかし、かつてのD-VHSやDV/HDVがハードウェア製品としては(少なくとも家庭用としては)ほぼ姿を消しているにもかかわらず、その信号フォーマットだけは規格として残っているように、今後インターネットを用いた映像伝送の普及によって「視聴者のテレビ離れ」が進んだとしても、ケーブル1本で映像・音声や各種付加情報まで伝送できるISDB-Tは伝送規格としては永く使われるのではないだろうか。

そうなったとき、映像・音声を入力して、ISDB-T準拠のRF信号を出力できる変調器は、「地デジ対応のテレビ/レコーダ」というすでに普及しているインフラをターゲットとして利用できる伝送手段として注目される日が来るかもしれない。特に、現在家庭用レコーダでは「HDMI入力」を持ったものが存在しないため、HDMI入力を持つISDB-T変調器が登場した場合、一定の需要があると思われる。

家庭向けISDB-T変調器のあるべきスペックは?

将来家庭向けのISDB-T変調器が製品化されるとしたら、そのあるべきスペックはどのようなものだろうか。前述のVMD3Mをベースに現実的なスペックを考えてみた。

入力 映像 コンポジット、コンポーネント(Y/Pb/Pr)、HDMI 各1
音声 アナログL+R、HDMI(エンベデッドオーディオ) 各1
RF ISDB-T ×1
出力 RF ISDB-T 13ch~62ch(HD一波) ×1
I/F USBまたはEthernet(付加情報設定用) ×1

低価格化のためには、付加情報設定機能は省略してもよいだろう。また、変調機能に特化するなら、入力はHDMIのみ、という割り切りも可能かもしれない。

その他

今回は単体でエンコード・変調が行える変調器のみを取り上げたが、それ以外にもエンコードのみを行う製品、それらの製品が出力したTS信号を変調するだけの製品も多数存在する。また、単体で動作する機器のほか、PC用ボードの形態のものもある。

現在、個人向け製品としてはPC用のISDB-Tチューナーボードが人気カテゴリになっているが、次は変調ボードが来るのだろうか。