Home » Audio & Visual » RD-BR600レビュー

RD-BR600レビュー

Audio & Visual

(2010/11/28)

RD-BR600東芝のブルーレイ「RD」第一世代のエントリー機種RD-BR600を、メディアがBDになったことによる部分と、スカパー!HD録画機器としての機能を中心にレビュー。

2010年11月27日時点の最新のファームウェアでテストしています。

低価格路線をとるレグザブルーレイ

「RDシリーズ」と呼ばれる東芝のHDD/DVDレコーダーは高度な編集・ダビング機能をウリとして、録画マニアに人気の製品だ。しかし、次世代DVD戦争に巻き込まれる形で他社に比べ周回遅れになってしまったBD搭載のRDシリーズは他社の同等スペック品よりも低価格になっており、録画マニア以外の価格重視のユーザーも獲得しようとしていることがうかがえる。特に本機はそれが顕著で、チューナーがひとつである他、i.LINK端子も省略されている。また、電源ケーブルも最上位のRD-X10を除いて本体直付けになった。しかし、USB端子はしっかり2つ搭載されており、外付けHDDを利用することで内蔵HDDの少なさを補えるようになっている。

前扉を開けないと電源ボタンを押せない

外観をこれまでのVARDIAブランドの製品と比べると、前扉の中央が出っ張ったデザインに変更された。また、蛍光表示パネルとディスクドライブの左右が逆になった。これにあわせて電源ボタンも左から右に移動した。使用する上での大きな違いとしては、前扉を閉じた状態では本体の電源ボタンを押せなくなったことだ。従来は前扉にも電源ボタンが付いており、前扉を閉じた状態でも電源を入れたり切ったりできていた。この点ではデザインのために使い勝手が犠牲になってしまっている。

GUIもレグザカラーに

編集ナビなどのGUIも従来の水色を基調にしたものから、液晶テレビのレグザと同じグレーを基調としたものに変更された。ところで、画面によって描画解像度が異なるようで、例えば同じ番組ナビでもトップ画面よりも番組表の方が描画解像度が高いようだ。

番組ナビトップ画面

番組表画面

 

BDの初期化に失敗することがある

本体の初期設定を終えて、デジタル放送の番組をDRモードで録画し、その番組をBDにダビングするために、消去済みのディスクを本機でフォーマットしようとしたところ、「このディスクは初期化できませんでした。ご使用になれません。」と表示されてフォーマットが失敗してしまうことがあった。このディスクはPCで高速消去したものだったが、パナソニックやシャープのレコーダでは問題なく初期化できていた。そこでPCで完全消去(25GBの一層REディスクで約1時間半かかる)したものを使用したところ初期化することができた。一方、PCで高速消去しただけのディスクでも初期化できることもあった。やや動作が不安定なようだ。なお、初期化作業自体は速く、25GB一層REディスクなら1分程度で終了する。

初期化したBDAVディスクのディレクトリ構造

RD-BR600で初期化したBDAVフォーマットのディスクには【2011.1.1訂正】「TSB0003」「TSBnnnn」(nは連番で、先の初期化に失敗したディスクも通しで数えているようである)というボリュームラベルが付けられ、ルートディレクトリには規格にあるAACSフォルダ、BDAVフォルダに加えてTEMPという名前のフォルダが作成され、その中にはRDCOMRSV.DATという0バイトのファイルが作成されていた。なお、初期化しただけで何もダビングしていない状態ではAACS関連のファイルは\AACS\MKB_RW.infのみが書き込まれており、\AACS\AACS_avフォルダには何も書き込まれない。AACSで保護されるものをダビングした時点でこれらのファイルも一緒に書き込まれるようだ。なお、筆者が使用した個体ではAACSのMKBはv15だった。

【2010.12.1追記】11月30日から配布が始まったソフトウェアバージョン10を適用すると、MKBがv20になる。

BDAVへの番組情報記録

放送ストリーム自体の記録に関してはBDもHD DVDも大して違いはないが、BD(BDAV)とDVD/HD DVDで大きく異なるのが番組情報などの記録部分である。BDAVでは\BDAV\PLAYLISTフォルダに作成されるnnnnn.rplsというファイルに日時やチャンネル、番組名、番組説明などが記録されるようになっているが、日付と番組名程度しか記録しない機種も多い。RDシリーズではHD Recでのダビング時に番組情報もきちんと記録されていた。BDAVへの記録時もこの点は健在で見るナビのタイトル情報の内容が.rplsファイルに記録されていることが確認できた。

BDAVのチャプタ名も認識

PCを使えばトラック名だけでなくチャプタ名も付けたBDAVを作ることができる。しかし、PS3も含めてほとんどのプレイヤーではこのチャプタ名までは表示されない。それに対して、RD-BR600ではこれらのチャプタ名もすべて見るナビで表示される。このあたりはRDの面目躍如といったところだ。

BDからのダビングは不可

BDAVからHDDへのダビング(書き戻し)といえばパナソニックが2010年秋モデルで初めて対応したが、これはAACSで保護されたコンテンツの場合の話で、そうでないコンテンツの場合は以前から可能だった。例えば、パナソニックの2006年モデルであるDMR-BW200でもAACS保護のかかっていないコンテンツであれば再エンコードが必須となるもののBDAVからHDDへのダビングも可能だった。しかし、RD-BR600ではAACS保護の有無にかかわらずBDAVディスクからHDDへのダビングは行えない。BDAVに対して編集ナビを開くことができないようになっている。DVDではCPRM保護のかかっていないDVD-VRフォーマットのディスクからHDDへのダビングができていただけに、そのBD版ともいうべきBDAVからHDDへのダビングに対応していないのは残念だ。

スカパー!HD録画機器としてのRD-BR600

RD-BR600は量販店での実売価格が6万円台前半で、「スカパー!HD録画」に対応しているBDレコーダーとしては最も安い。シングルチューナー機ということもあって、地上波やBSを録画するためではなく、スカパー!HD専用のBDレコーダーとしての利用を考えているユーザーも多いのではないだろうか。そこで、スカパー!HDチューナー(ソニー製DST-HD1)を用意し、スカパー!HD録画を試してみた。

電源制御に関する問題

スカパー!HDでは予約録画開始時刻が近づくと自動的に録画機器の電源も入ることになっているが、DST-HD1とRD-BR600の組み合わせではRD-BR600の電源が入らないこともある。そのため、確実に録画を実行するためにはRD-BR600側の電源を入れたままにしておいた方がよいだろう。しかし、録画終了時にチューナーからの制御により電源が切れてしまうこともあり、複数件の録画予約を行っているときには不安が残る。RD-BR600、DST-HD1いずれの取扱説明書にも詳細な記述がないため、やってみないと分からない点が多い。改善が望まれるところだ。

スカパー!HD録画中は何もできない

「スカパー!HD録画」とはスカパー!HD対応チューナーと録画対応機器をイーサネットで接続し、DLNAの仕組みを使って録画を行うもので、録画予約はチューナー側で行い、レコーダーをいわばチューナーの外付けHDDとして使うようなものである。RD-BR600でスカパー!HD録画を行っている間、RD-BR600側はほとんど何もできなくなり、ディスクの取り出しすら行えなくなる。外付けHDDとしての役割に徹していることになる。ただ、例外としてスカパー!HD録画中でも内蔵チューナー(本機はデジタルチューナーのみ搭載)での録画は行える。同じ世代のRDシリーズの他機種(X9、BZ800、BZ700)ではスカパー!HD録画中は内蔵チューナーによる録画も行えなくなるのでこの点はBR600だけのメリットだ。

番組名のみで番組情報は記録されない

今回はソニー製スカパー!HDチューナーDST-HD1を使用して録画を行ったが、RD-BR600側に記録されるのは番組名だけでEPGに含まれる番組情報は記録されない。ソニー製レコーダーと組み合わせた場合は番組情報も記録されるとのことなので、ここを重視する場合はソニー製レコーダーを選択した方が良いかもしれない。

スカパー!HDをダビングしたディスクの互換性

ISDB-T/Sには準拠せず、DVB-S2で放送されているため、BDにダビングできるものの、録画・ダビングした機器以外での再生互換性が保証されないスカパー!HDの番組。ここでは、録画したスカパー!HDの番組を編集は一切行わずにそのままBDAVにダビングし、各機器での再生互換性を調べてみた。

再生機器 結果 備考
PlayStation3 再生できる
LG電子のBDプレーヤ
BD370
再生できる
サイバーリンクのBDプレーヤソフト
PowerDVD7.3
再生できる
PanasonicのBDレコーダ
DMR-BW200
再生できない 再生を開始すると黒画面のまま停止してしまう
シャープのBDレコーダ
BD-AV10
再生できない 「再生できないタイトルです」と表示される

※筆者が使用した個体での結果です。製造ロットやファームウェアのバージョンにより、結果が異なる場合があります。

スカパー!HDで使用されているMPEG-4 AVC/H.264はBDでもサポートされており、BDレコーダでは再生できてもよさそうなものだが、比較的古い機種では再生できなかった。LGのBD370はYouTubeにアクセスできたり、PCでディスクに書き込んだ映像ファイルも再生できるなど、メディアプレーヤ的な機能があるため、スカパー!HDを録画したものも再生できたのだろう。

蛇足だが、ソフトウェアバージョン10でも、AnyDVD HDの2010年11月27日時点の最新版であるバージョン6.7.3.0でも問題なく処理でき、TMPGEnc 4.0 XPressでも普通に扱えた。

【2011.1.1追加】スカパー!HD録画機器としての安定性

スカパー!HD録画については、録画に失敗する、という情報が多く見られる。家電の世界にPC的なものを持ち込んでしまったような感じであり、現時点ではまだまだ不安定な仕組みだと言わざるを得ない。実際に筆者が使用した個体でも日に日に録画成功率が下がり、購入後約20日目あたりでまったく録画が行えなくなってしまった。

そこでRD-BR600に代えて、アイ・オー・データ機器のレコーディングハードディスクHVL-AV1.0との組み合わせで録画を試してみたところ、こちらは一度も失敗することなく録画が行えている。【2010.1.8追記】この組み合わせでも録画に失敗する現象が確認できた。なお、DST-HD1からHVL-AV1.0に録画した番組をRD-BR600にムーブした場合、EPG情報も記録されるが、番組によっては番組情報文中のひらがながカタカナに化ける、という現象が確認された。

なお、ソニーのサイトではこのHVLシリーズとの組み合わせにおいて、機器が上手く認識されない場合、DST-HD1のリセットボタンを押すように案内しているが、この「リセットボタンを押す」という操作はRD-BR600との組み合わせでも有効なようである。しかし、いくらリセットボタンを押せば回復するとはいえ、使っているうちに徐々に録画成功率が落ちていく、というのではやり直しのきかない大事な録画には使えないということになるだろう。

現時点(RD-BR600のソフトウェアバージョン12)では、RD-BR600をスカパー!HD録画機器として使用するのはリスクが大きいというのが結論だ。

【2011.8.16追記】ソフトウェアバージョン17においても、DLNAでの録画にはたびたび失敗する。やはり、RD-BR600はスカパー!HD録画には決して利用すべきでない。(本稿にあるようにHVL-AV1.0のような別のHDDにいったん録画してからRD-BR600に転送するのが安全だ)